彼の背中と
仕事が全部片付き、家に帰ると
彼は暗くて小さい部屋の奥で
一人用の布団を半分だけ使って小さくくるまって寝ている。
私は今昼の仕事と夜のバーを掛け持ちしている。
よくある、追い込まれてお金が無くて焦ってバイトの面接を詰め込みすぎる癖の仕事に就けてしまったパターンだ。
そのために朝早くから夕方までが仕事の彼と生活パターンが合わなくなってしまった。
彼を出来るだけ起こさないようにさくさくと顔を洗って着替えて布団に潜り込むと
彼は大概私に背を向けてさらにコンパクトな形になる。
そしてその頭や背中を撫でながらそっと今日のことを振り返るのが最近の日課である。
バーの仕事は未経験のことばかりで新鮮な毎日だ。それと同時にかなり神経がすり減る仕事でもある。
何より、多忙な彼との大切な時間が削れるのは想像以上に私にはダメージが大きすぎた。
興味もない人とどうでもいい話をして水を流し込む時間なんかより彼の隣に座っている時間の方がずっとずっと私のためになる。
寝ている彼の背中を撫でながら寂しくて悔しくて悲しくてずっと悶々と考え込むのだ。
バーでの経験ができたからこそ、彼との時間をきちんととる事が私の生活の大切なポイントだとしっかり気づくことができたのは唯一の利点か。
彼が私の家に住むようになって随分経つが、実家も近い彼にとって私もいないひとりの部屋に帰る必要も寝る必要もないのに
私の部屋に来て1人で時間を潰して寝て私が帰った時寂しくないよう居てくれている。
それがまた申し訳なく、そしてありがたく、この時間はやっぱり家にいるべきと思うのだ。
そんな優しい彼が大好きだ。
彼と生活しやすい仕事に見直していきたいと考えつつ、
明日に向けて今日はもう眠ろうと思う。
まや